渋谷駅前の銅像で知られる秋田犬「ハチ公」の最期の写真が、渋谷区郷土博物館・文学館に寄贈され、16日から同館で公開される。ハチ公が死んだ1935年3月8日に撮影され、その後、杉並区在住の女性の手に渡っていた。ハチ公は当時から「忠犬」として広く親しまれる存在だったが、写真資料など現存するものは数少なく、同館では当時をしのぶ貴重な資料の一つとしている。(森重孝)
公開される写真は、渋谷駅の手荷物室で撮影されたとみられる。中央にハチ公が目を閉じて横たわり、周囲で駅員らが手を合わせている。
同館によると、ハチ公はこの日、渋谷川の橋近くで冷たくなっていたところを発見され、同駅に運び込まれた。当時11歳だった。
亡くなった飼い主を迎えに、何度も駅に足を運ぶ姿は新聞などでも報じられ、その存在は有名になっていた。乗降客や駅員もかわいがり、駅の手荷物室をお気に入りの休息場所としていたという。
寄贈した女性は、父親が当時の駅員だったことから、この写真を保管していた。同じ写真は当時、都内で発行されていた新聞にも掲載されている。
同館では「写真を通じて、多くの人にハチ公の生涯に関心を持ってもらえれば」と話している。
展示は7月22日まで。問い合わせは同館(03・3486・2791)へ。
77年前、本誌も報道
77年前のハチ公の死は、当時の読売新聞も大きく報じていた。写真とともに、その生涯について詳しく伝えている。
「骸(むくろ)へ注がれる涙」「数え切れぬ名誉の生涯」――。大きな見出しとともに、記事では、ハチ公を発見したのは20歳の男性で、「ハチ公!」と呼びかけたが、応えがなく、駅員らといっしょに、お気に入りだった駅の手荷物室に運んだことなどを伝えた。
当時のハチ公の人気ぶりについては、小学校の教科書に登場することになっていたことや、皇室にハチ公像が献上されたことなどを紹介。死んだ当日には、渋谷駅前に設置されていたハチ公像前で、通行人らが手を合わせたり、僧侶がお経を上げ冥福を祈ったりしたという。
飼い主だった上野英三郎博士の妻は「慕っていた主人のそばへ行くことができて安心したような気持ちもします」とコメントを寄せていた
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